会社が倒産!! 手続きはどうする
社会保険労務士の仕事をやっていると、3、4年に1回は 突然 顧問先の企業が倒産して 事業主が行方不明、給料も、退職金も未払い、退職手続きも一切できない、ということを経験します。
このときに大変な迷惑をこうむるのは、何の責任もない従業員です。このような結末は、企業を経営する者として、まったく無責任極まりない、最低の行動だと思います。
残された従業員は、どう対処すればいいか、考えてみたいと思います。
雇用保険の手続
職安で離職票を発行してもらうには、退職日以前6か月間の賃金台帳か給料明細が必要です。
また、事業主の印鑑も必要です。
しかし、事業主が行方不明の場合、この両方がない、ということがあります。
まず、従業員本人が給料明細を保存していれば、それで確認してもらえます。
それもないときは、給料が振り込まれた銀行の通帳でも確認してくれるケースがあるようです。(ただし、手取額しか対象にならないので若干不利になります)
また、
事業主の印鑑がないと、職安で離職票を発行してもらえません。
どうしても印鑑がもらえない場合、職安では従業員を呼んで話を聞き 事業所が倒産したこと、事業主との連絡がどうしても取れないこと等事実関係を確認した上で、職権で離職票を作ってくれます。
(離職票をもらえるまでに 通常1週間以上かかりますし、資料がそろわないと結局作ってもらえないこともあります)
また、破産管財人がいれば、管財人の印鑑で離職票を作ることができますが、現実問題、前述の方法よりさらに時間がかかります。
事前の対策は?
従業員個人としてできることは、給料明細を大切に取っておくことです。
会社の労務担当者としては、賃金台帳は必ず保管しておくこと、また、可能であれば 事前に離職票の用紙に事業主の印鑑を押してもらっておくことです。
しかし、なによりも、事業主が最後まで責任を果たして手続きに協力してくれるように依頼しておくことが、最善の方法です。
以前あったことですが、実質は従業員なのに 形だけ会社の取締役登記をしていた人がいて、事前に職安で兼務役員の確認手続がされていなかったために、雇用保険の被保険者と認められなかったことがあります。
(事業主が行方不明で、結局自分が兼務役員だという証明もできなかった)
本人は、手続きについてまったく知識がなかったために、事業主が行方不明になって自分で職安に相談に行き、はじめて雇用保険がもらえないことがわかったのです。
※「役員の雇用保険」の説明はこちら
社会保険の手続
健康保険・厚生年金保険の手続も原則として事業主の印鑑がないとできません。
事業所が健康保険の資格喪失手続をしていないと健康保険の任意継続の手続をしたとしても任意継続の保険証がもらえません。
健康保険から国民健康保険への切り替えには資格喪失の事業主の証明または年金事務所への健康保険資格喪失届の控え(コピー)が必要です。
また、
厚生年金保険から、国民年金保険への切り替えのためには、厚生年金の資格喪失の事業主の証明か年金保険事務所への届出の控え(コピー)が必要です。
いずれにしても、このように事業主の印鑑がないと、従業員に迷惑がかかります。
年金事務所では、どうしようもない場合に限って 事実関係を確認し、職権で資格喪失をしてくれますが、やはり時間も手間もかかります。
ここでも 可能であれば 必要な届出用紙に事業所の印鑑を押してもらっておくと手続がスムーズにいくことがわかります。
国の未払い賃金立替払い事業
事業所が倒産して、賃金未払いのまま退職した労働者に 国が 事業主に代わって未払いの賃金を立替払いする制度があります。
相談窓口は会社の所在地を管轄する労働基準監督署です。「労働福祉事業団」が立替払いをする方法を取っています。
立て替えられるのは、申立てがあった日から6か月以内の賃金(ボーナスは除く)、退職金、の内一定額です。
労災保険に加入している事業所であることや、労働基準法上の労働者であることなどいくつかの条件があります。
ここでも、手続をするときに賃金台帳か賃金明細が必要になります。その他退職金支給の根拠となる就業規則なども必要です。
いずれにしても、関係官庁との話し合いのためには、従業員がまとまって行動したほうが都合がいいので、いざというときは連絡網を作るなどしておいたほうがいいでしょう。
会社を閉鎖するときの労務事務手続
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手 続 |
提出先 |
従業員に関する
手続
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雇用保険の資格喪失届・
離職証明書発行の手続 |
公共職業安定所 |
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失届
・健康保険任意継続の手続 |
年金事務所
協会けんぽ |
事業所に関する
手続 |
雇用保険適用事業所廃止届
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公共職業安定所 |
健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届 |
年金事務所 |
労働保険確定保険料申告書
※労働保険料の清算です。 |
労働基準監督署 |